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人事だけではない!会計にも影響する同一労働同一賃金(弁護士による「偶発債務」解説)

2020.04.15

同一労働同一賃金

人事だけではない!会計にも影響する同一労働同一賃金(弁護士による「偶発債務」解説)

同一労働同一賃金

偶発債務とは、「将来的に債務が発生するか否か不明だが、現時点では債務が発生しそうな状況」を指します。決算日現在で、債務が発生するような状況では決算書にこのことを注意喚起する必要があります。また、偶発債務により会社に相応の損失が発生する可能性がある場合は、「将来に発生する可能性の程度」と「損失金額の見積もり」を決算書に記載する必要があります。

例えば上場企業の場合、偶発債務の存在を隠していると有価証券報告書偽装記載で粉飾決算の疑いが発生してしまいます。ここ数年で有名な上場企業の偶発債務を例に見るとシャープと中国系メーカー鴻海(ホンハイ)の最終締結が偶発債務の存在により保留となった事例がありました。この時、シャープは偶発債務として4つの項目を決算書に報告していました。決算書に報告した4つの項目とは別で偶発債務が発覚した場合でも、前述のように粉飾決算の疑いがかけられることになります。

では、実際に偶発債務にはどのような事例があるのでしょうか。具体例を見ながら紹介していきます。


企業が知っておくべき事

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の手当に格差があり、その格差に対して不平等だという判定がされると同一労働同一賃金に反する、つまりパートタイム・有期雇用労働法違反になります。

このような事態が起きた場合、非正規雇用労働者(派遣社員・契約社員・パート社員など)は、直接会社に請求・労基署や社労士へ相談する・弁護士へ相談して訴訟・交渉をおこなうなどして、手当の格差を会社に請求することができます。もし、会社が求めに応じない・格差の是正に努めないなどをすれば、最終的に裁判所へ訴訟を提起し、裁判所が判断することになります。

会社としては、自社の訴えを優先するため労働者サイドの主張には「根拠がない」と抵抗することが多いが、実際には裁判で負けるケースが多く、判決文の通りの支払い命令に加えて損害賠償金も支払うことになります。

雇用者と会社の契約は商法で決められているため、雇用者との契約期間中であれば未払い金に対しての年6%を遅延損害金として支払わなければいけません。もし、雇用者が退職しているような場合では「賃金の支払の確保等に関する法律」(以下「賃確法」)が適用され、未払い金に対して年14.6%の遅延損害金を支払うことになります。

 

このように裁判中で判決が出ていない場合で、会計上の債務が発生する可能性がある場合は「裁判をしている」という事実を決算書に記載する必要があります。

これが冒頭で説明した偶発債務です。

 

会計規則では将来支払義務のある債務の可能性がある場合に、その内容及び金額を注記することを求めています(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第58条)。

非正規雇用労働者から手当や給与に関する差額の請求があった場合には、請求が妥当で会社が支払う虞があることから、偶発債務の内容を決算書類の注記として書かなければなりません。事案に関して訴訟に発展していれば、その旨も書きます。

会社の顧問会計士などと相談の上、適切な注記をするようにしましょう。